restart3210の雑記帳(R)

ヤフーブログから引越しして来ました

遠い昔の実話

 
今でも鮮明に思い出す事があります。
まだ全寮制の学校に行っていた頃のお話です。
 
その学校の中等部3年の冬、
終業式を済ませて友人と札幌駅に向かいました。
列車の発車時刻まで、かなりの余裕があり
地下街の一角にあるレコード店に寄る事で意見が一致。
店内に入り、それぞれ目当てのアーティストの
レコード・コーナーへ。 しばらく「次は何を買おうか」と
アルバムを手にとっては戻していました。
やがて列車の出発時間が迫ってきて、駅の改札口へ
向かうべく店を出ようとした時に
一人の店員が行く手を遮ったのです。
 
「コートの中の物を全部出しなさい」と。
周囲にいた客たちの視線は自分に集中します。
とりあえず友人に店外で待つように話し、
平然とコートの中の物を彼に渡します。
それまで息巻いていた店員の顔色が悪くなり、
自分に集中していた視線が
次第に彼への非難が込められたものに変わりました。
 
出てきたものは、愛用の草臥れたカセットテープ6巻。
インデックスも自分の下手な字で書いてあります。
万引きの誤認に対し、どう収拾つけてくれるのか、
発車時刻が迫ってきたので、自分も気が焦ります。
 
「何も無いんだったら、別にいいんだ」
謝罪の言葉も残さず、非難の視線から逃れるように
店員が立ち去ってゆきます。
自分は列車に乗り遅れまいとテープを仕舞い、
踵を返し外で待っていた友人と車両に乗り込みました。
 
「なんで抗議しなかったんだ?」
まるで自分が疑われたかのように怒る友人。
自分独りなら抗議したかも知れませんが、
ゴタゴタに巻き込みたくなかったのと
この列車を逃せば親にも迷惑を掛けるという
考えが優先したのだと思います。
「障害者だと思ってバカにしゃがって!」
なおも怒りを露わにする彼に
…そういえば俺、障害者だったっけ?
呟いた言葉に、呆れ顔の友人。
今思えば、嫌疑を掛けられた事よりも
普通の人並みに扱われたことに
自分自身が驚いていたのでしょう。
 
新学期に他の友人や先生方から、
励ましや慰めの言葉を頂いて、嬉しく思いました。
この騒動の噂が広まったのかは判りませんが、
それから1年も経たないうちに
そのレコード店のスペースは和菓子販売の
店舗になっていたそうです。
 
“因果応報”というものを
その頃の自分は思いました…。
 
遠い昔の実話です。